旅と本

本と旅行とおいしいものについて

校閲ガール トルネード(宮木あや子)

 

「いいよ。今日の夜空いてる? 飯食おうぜ」

「なんでよ、いま取りに行くか、あとで届けてよ、なんであんたとご飯食べなきゃいけないの」

「接待用に開拓しときたい店があんだよ、ひとりで行くのもかっこつかないから、おまえ付き合え。俺のおごりで東京いい店たかい店だぞ」

ゴチになります!」

 間髪入れず答えた悦子に、ゲンキンだなー、と呆れた顔を見せたあと、貝塚は「じゃああとでな」と言って何故か若干スキップ気味に戻っていった。

なんでここ引用したかっていうと、スキップで戻る貝塚が可愛いってだけなんですけど。

 

 おしゃれ命、ファッション誌の編集になりたい執念だけでコネもなしに出版社に就職したものの、何故か校閲部に所属された河野悦子のお仕事小説第三弾。ドラマ化したこのシリーズも、ついに完結です。

綺麗にオチてはいるけど、その後も気になる感じ。番外編、あるいは他の作品にちらっとだけでも登場して欲しい。(作者ブログを確認したところ、やはりこれで完結したらしい。加奈子ちゃんは再登場の可能性アリとのことなので、悦子のその後がちらっと書かれたらいいなー)

ドラマは、正直お仕事部分(校閲)に関する部分は控えめに言ってクソ(失礼)だったんだけど、キャスティングや人間模様や恋愛に関するアレンジがほんっとうに好きで、その部分に関しては前作アラモードまでをうまーく落とし込んで着地させていて見事だった。

ら、なんと、9月にスペシャルドラマで帰ってくるらしい。

私、ドラマのタコこと貝塚とえっちゃんの絡みが好きで好きでたまらなかったので、トルネードの内容を実写キャストで見られたら嬉しすぎるんですけども。貝塚の青木さんがでっかくてがっしりしてるのと、えっちゃんの石原さとみがちいさくて華奢で可愛いのがもうたまらなくてね……。やきもちやいてじたじたしている貝塚を青木さんで見たいいい

あらすじ見たところあんま関係なさそうですけども。いやでも、あの展開をちょびっとでも下敷きにしてくれれば……(往生際が悪い

 

で、続きからは、トルネードの話。

 

 

恋愛的にも、お仕事的にも、予想できた結末ではあるものの思ったより痛みを伴うものだったのが、切ない。森尾やめちゃうとは思ってなかった。

「天職」という問題については、部長の言うとおりゆっくり向き合っていけばいいよ、とも思えるんですけど。自分が傷つく選択だとしてもいつも突っ走っちゃうのが悦子なのか。

その問題が密接に恋愛に関わってくるとは思わなかったなー……なんか、ああいう風にこれまでの気持ちまで否定的になってしまうのは、悲しい。いや私はもともとゆっくんより貝塚派だったのでこのなりゆきに関しては小躍りするぐらい嬉しいんですけども! でもおんぼろ鯛焼き屋に住む悦子に惚れ直すゆっくん可愛かったのに!

で、貝塚。大変可愛かったです。冒頭悦子のGWの予定について聞きたがってたのは仕事というより軽井沢に誘いたかったんだろうなあ、とか、キスの間の沈黙に電話の向こうで慌てまくってるのとか、何とかご飯に誘えてスキップしちゃうのとか、おいしいもの食べさせてもらって笑顔の悦子見て満足そうなのとか、悦子目線の話だと本当に脈なさそう(かわいそ可愛い)だなあ、とか。

いやしかしラスト! 脈無くもないんじゃないかっていう! 「よし帰れ!」って可愛すぎるよ!!

悦子は基本素直すぎるくらいに(自分の欲望にも・笑)素直なので、ひねずに好意を伝えたら、ワンチャンスあるんじゃないかっていう希望のあるラストで貝塚派としても大変嬉しかったです。あと仕事真面目にやれよっていう。ちゃんと校閲後チェックするようになっててよかった。

冒頭に書いたとおり痛みを伴う切なさが溢れた話だったんですけど、読後感としてはさわやかでいいお仕事恋愛小説でした。

蛇足、悦子につられて「むしず」って何だよって調べちゃったよ。諸説あるんですね。どっちにしても割と気持ち悪い感じ・笑