政略結婚(高殿円)
「…………はい」
呆然としたままタカさんは言った。ようやく声が出た、といった風に見えた。
「すべて、貴女のおっしゃるとおりにします」
三つの時代を生きた女性の、政略結婚を巡る話。
と、言っていいのかどうか。タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて読み出したんだけど、実際あんまり政略結婚関係ない。「お家」というものに縛られながらも前向きにまっとうにいきいきと生きた女性たちのお話ではあると思います。
正直このタイトルで、縁のある女性たちを繋ぐ九谷が描かれた趣向としては中途半端に終わっている印象です。が!
特に二つ目のお話、「プリンセス・クタニ」がもう単にとても胸がきゅんとするラブストーリーだったのでもうそれでいいんじゃないかな!
幼少期を過ごしたカナダから江戸時代の風習が色濃く残る明治期の日本へ帰国し、日本で初めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオン・ガールになった女性の物語。
華族ながら独立心にあふれた万里子と、彼女の友人の兄・タカさんの距離感がたまらないのです。
あと私はたぶん、「友人のきょうだいとの恋」というシチュエーションにめっぽう弱い。