君に光射す(小野寺史宜)
「石村くんが人にたすけられてもいいんだと思うよ」
「え?」
「たすけるばかりじゃなくて、たすけられてもいいんだと思う」
「ああ」
「でね、こうも思った。その役をわたしがやるのもありかなって」
教師をやめて施設警備員になった主人公・石村圭斗の過去と現在が交互に語られる。
商業施設で見かけた置き引きをしようとした女の子。元同級生からのストーカー行為に悩む教え子の母親(シングルマザー)。
実際こういうとき、どうしたらいいんだろうね。
石村君は正しい。
けれど、教師を辞めるべきだったとは思わないけれど、やっぱり彼は危なっかしいとは感じる。じゃあどうすればいいんだと考えたときに、帯にもなっている渋川さんの「きみだってたすけられていい」という言葉に尽きる。渋川さんがいてよかった。
なんとなく小野寺作品には、健気に子育て中のシングルマザーと出会う好青年が良く出てくる気がする。両想い、片想い、恋愛にはならない(今回)などパターンはそれぞれだけど。
そうそう、最初に出てくるゲーセン好きの宮脇くん、なーんか気になってたんで、最後にちょろっと出てくれて嬉しかった。あそこで読後感がよくなったな。
ただ、視力が下がっているのに眼鏡を嫌がる話は、主人公の精神的な視野の比喩なんだろうけど、しょっちゅう悲惨な事故が起きている現代で妙に不穏に感じてしまったからなくてよかったなあ。
あと、ちらりとしか出てこない(必要ではあるんだけど)人物までフルネームだったりで記載されると情報が多すぎて疲れる。シングルマザーの元夫のフルネームなんて絶対いらない。筆致は淡々としているのに妙にくどく感じるのはこのせいかも。
と、読みにくい部分もあったんだけど、全体としてはとてもよかった。ここ最近の小野寺作品にはぴんとこないことが多かったので久々のあたり。
そろそろ著作を追いかけるのをやめようかと思っていたんですが、やっぱりもうちょっと追ってみよう。