旅と本

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ベルリンは晴れているか(深緑野分)

 

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 

1945年のベルリン。米国の兵員食堂で働くドイツ人少女アウグステは、かつての恩人クリストフが遂げた不審な死に関わっている疑惑を向けられる。彼は青酸カリ入りのアメリカ製歯磨き粉を口に含んで亡くなった。その訃報を彼の甥に伝えるため、アウグステは陽気な泥棒カフカを道案内としてその行方を探す旅に出る。

 

 ミステリー部分以外が秀逸。過酷な状況の中でいつも清く正しくなんてきれいごとだけど、懸命に生きる人々。現在と幕間として描かれるアウグステの過去が交互に現れ、それぞれの立ち位置からの描き方にどれも惹かれた。アウグステも、カフカも、旅で出会う人々も、この先に光がありますように。そういう意味ではとてもよい読後感。以下、物語の核心部分に触れる部分は続きに。

 

ただ、謎解きはどうにも…。「クリストフを毒殺しようとしたのは誰か、その理由は」の謎自体はとてもよかったのだけれど、「彼が殺しまわった理由」はまだしも、「自らを殺した理由」を彼の人生を全く語ることなしに放り投げられても消化不良。ここが非常に惜しいというか、ミステリとしては致命傷のような気もする。

筆致は好みだったので、ほかの作品も読んでみようかと思っています。